神の怒り その1 『新約聖書 ヨハネ黙示録』第3章 汝らは自負せり。己れ資産に恵まれ、財富を 築き、満ち足れり、と。かくして汝ら顧みざるは、 不幸なる人、憐れな人、貧しき人、さらには視力 のない人、衣帯に欠ける人である。愛する汝らに 我これを戒め、これを懲せむ。ただちに励みて 悔い改めよ! L'Apocalypse, La Bible de Jerusalem, Paris, 1973 |
テント小屋で避難するリスボン住民 (リスボン市史料館所蔵)Refugiados da cidade acoampados .Alemanha,
séc XVIII?
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【第490項】
最初の夜から悲痛な叫び、絶えざる衝撃、続発する地震へ恐怖、かつまた王都のほとんど全域を襲う火災がすべての人々の艱苦を倍加させ、財産の欠如と父母の喪失を痛感させた。大半の家族が引き離され、頼るすべもなく泣き続ける。かくも多くの苦難に耐えうる人だけが、神意により救われると思われた。
【第491項】
火焔は家々を焼き続け、地震も衰えを示さない間に、不遜な盗賊は神をも炎をも怖れず、侵入した邸宅で金銭、宝石、衣類を掠奪した。地震でも家が崩れず、火災の被害も受けぬ多くの家族が、盗難によって文無しになった。これらの多くはガレー船を科せられた罪人や牢獄から脱走した囚人に帰せられる。
【第492項】
火災の連続と地震の続発によっても、私たちは祖国と国土への愛を忘れなかった。神は罪人の赦免を望まれ、魂の救済のため大地を示された。王国のあらゆる都市、町村、地域にいる近親や友人を求めて、その土曜日多くの人々が歩き続けた。以後幾日も悩める旅人が街道に溢れる。近郊の野に留まる人々は、豪華な寺院、壮麗な宮殿、神聖な殿堂、さらには宝石、調度、衣装など多くの富が炎上するのをときには目のあたりにした。
18世紀のサン・ジョルジェ城は一部廃墟と化していたが、教会、修道院、福祉施設とともに、リスボン市の関係機関も置かれた。モレイラ・デ・メンドンサが所属した古文書館のそのひとつである。1755年地震と津波に襲われた民衆は瓦礫の坂道を登って、城内の広大な庭園に続々と蝟集する。彼らは城壁から市街の倒壊・氾濫・炎上を見詰め、大樹や遺蹟のもとで幾週も野宿した。
大火に襲われたリスボンの全景(リスボン市史料館所蔵) Vista panorâmica de Lisboa devastada pelo fogo, Alemanha, séc XVIII ?
『オクスフォード黙示録』Oxford Apocalypse, about 1272.
荒墟における被災者たちの祈祷 (リスボン市史料館所蔵) The destruction of Lisbon by an earthquake 1755, London, 1817.
5/通覧II
3/通覧II
2/通覧II
1/通覧II
本稿の画像の説明において、括弧内に誌されたFLICKER などの英字はこれらの
オンライン提供元である。なお、SELFと付記した写真は筆者自身が撮影した。
サン・ジョルジェ城とその城下町 Castelo de S. Jorge by Henry Winckles, 1819 ?
(右上)テージョ河畔に位置するベルン離宮。地震による内部の
破壊は甚大であったが、建物全体の崩壊は免れた。
現在の大統領官邸である。(FLICKR)
(右下)仮設御所の敷地に後年建造されたアジューダ宮殿。
門前は庭園は広い緑地の面影を留め、ベレン河港を眺望できる。
(JEITOARTE)
ベレン河港における人々の散策と宏壮なサン・ジェロニモ修道院 アンリ・レベック画(リスボン市史料館所蔵 )
Vista do convento de Sao Jeronimo de Belem por Henri L'Eveque
震災を利して悪漢は、邸宅の財貨を掠奪し、死傷者の所持品を剥ぎ取った。
Looters, robebers, and worse in Latino Coelho,O marquez de Pombal..Portugal, 1905. (KOZAK)
ZDF enterpries
国王ジョゼ一世と王妃マリアナ・ヴィクトリア。
Rei Jose I e reinha Marianna Victoria(WIkipedia)
大地震発生のとき国王は 35歳で即位 5年目であった。また、直後にマリアナ王妃が実家のスペイン王室に宛てた書簡は、女性の筆で綴られた貴重な被災証言のひとつである。
リスボン随一の名勝サン・ジョルジェ城。その広壮な城郭と美事な展望(SELF)
6/通覧II
4/通覧II